源泉所得税の納期の特例のメリットと注意点

従業員が数名の会社です。源泉所得税を毎月納めるのが手間なので、年2回にまとめられる特例を使おうと思っています。使って問題ないでしょうか。

事務の負担は軽くなりますのでおすすめです。ただし、少しだけ注意点があります。

助手

従業員を雇い始めて間もない会社からいただくご質問です。毎月の納付書の作成と金融機関での手続きを負担に感じておられます。

田口

事務を減らす効果は大きい制度です。使うときに知っておいていただきたい点が3つあります。

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回答

源泉所得税の納期の特例は、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者が、所轄税務署長の承認を受けることで使える制度です(所得税法216条)。

原則は翌月10日までの毎月納付ですが、承認を受けると年2回にまとめられます。

  • 1月から6月に支払った分 … その年の7月10日まで
  • 7月から12月に支払った分 … 翌年1月20日まで

毎月12回の納付書作成と納付手続きが2回で済みますので、事務の負担はかなり軽くなります。

一方で、知っておいていただきたい点が3つあります。対象になる報酬が限られること、人数が増えたときに届出が要ること、そして1回あたりの納付額が大きくなることです。

特例を受けても毎月納めるもの

特例の対象になるのは、給与と退職金、それに弁護士・税理士・司法書士などへの一定の報酬(所得税法204条1項2号に掲げるもの)に限られます(所得税法216条)。

これ以外の報酬は、承認を受けていても原則どおり毎月納付します。たとえば外交員やホステスなどへの報酬が対象外にあたります。

「特例の承認を受けたのだから、源泉所得税はすべて年2回でよい」と考えてしまうと、対象外の分だけが期限を過ぎてしまうことになります。どの支払いが対象で、どの支払いが対象外かを、支払いの種類ごとに分けておく必要があります。

人数が10人以上になったとき

事業が拡大して、給与等の支払を受ける方が常時10人以上になった場合は、遅滞なく「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出します(所得税法218条)。

提出した日が属する期間の分から、毎月納付に戻ります。

採用が続いている時期は、人数の管理が後回しになりがちなところです。10人という区切りを超えたときに気づける形にしておくと安全です。

預かった税金の管理

源泉所得税は、毎月の給与から天引きして会社が預かっているお金です。会社の売上ではありません。

特例を使うと、この預かったお金が半年間、会社の口座に置かれたままになります。毎月納付であれば翌月には出ていくものが、6か月分たまることになります。

実務で起きるのは、この資金を運転資金に回してしまい、納付期限になって半年分を払うお金が手元にない、という事態です。事務の手間が減っているぶん、預かっているという意識も薄れやすくなります。

対策として確実なのは、毎月徴収した分を別の口座に移し、手を付けないことです。納税準備預金を使う方法もあります。動かせるお金と分けておけば、半年後に慌てずに済みます。

納付が遅れたときの負担

納付額が大きくなるという点は、資金を用意しておけばよいという話にとどまりません。納付が遅れたときの負担も、同じだけ大きくなります。

法定納期限までに納めなかった場合、原則として未納の税額の10%の不納付加算税がかかります。税務署から告知を受ける前に自主的に納付した場合は5%です(国税通則法67条)。

重要なのは、この10%や5%がかかる元の金額が、毎月納付であれば1か月分ですが、特例を受けていると半年分になるということです。実は、この不納付加算税は、計算結果の税額が一定額以下であれば、切り捨てられて0円になります。半年分になった場合は、切り捨て以上に税額が出てしまう可能性が高くなるということです。

半年に一度しか納付の機会がありませんので、納付そのものを忘れやすいという面もあります。

まとめ

  • 給与の支給人員が常時10人未満であれば、承認を受けて年2回の納付にできる(7月10日と翌年1月20日)
  • 対象は給与・退職金と、弁護士や税理士などへの一定の報酬に限られる。外交員やホステスなどへの報酬は承認を受けていても毎月納付
  • 常時10人以上になったら、遅滞なく届出書を提出して毎月納付に戻る
  • 天引きした源泉所得税は預かっているお金であり、半年分が会社の口座にたまる。毎月徴収した分は別の口座に移して手を付けない
  • 納付が遅れたときの不納付加算税と延滞税は、半年分の税額をもとに計算される

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税理士 田口直通(たぐち なおみち)
  • freee認定アドバイザー
  • 事業承継・M&Aエキスパート
  • 税理士(登録番号 第158875号)

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